エスカランテ300チャレンジ ~裸足シューズの効果を検証 30日間、毎日10km走ります~
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故障しづらいフォームを手に入れるため、そして脚力を鍛えるために、ベアフットスタイルのランニングシューズをトレーニングに取り入れることにしました。
ベアフットシューズとは、過度なクッション性や機能性を排した、ミニマルな構造のランニングシューズ。
シューズの機能に頼らないことで脚力が鍛えられる、身体本来の機能性を活かした理想的なランニングフォームを習得できる、等がベアフットシューズを用いる意義です。
しかし、あえてクッション性やサポート性を抑えたシューズで走ることに対して、以下のような不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
- クッション性やサポート性が低いシューズで走って、故障しないのか?
- 本当にフォーム改善に効果はあるのか?

Koki
このような疑問を解決したいと思い、僕自身が実際に検証してみました!
目次
検証の方法
今回は、僕自身がトレーニングの中で以下を行い、ベアフットシューズの疑問点および効果を検証してみました。
疑問①:ベアフットシューズは、故障しないのか
あえてクッション性やサポート性が抑えられているランニングシューズで硬いアスファルトの路面を走るということに対して、故障に繋がらないのか、というのは誰もが気になるところですよね。

Koki
僕もこの点が心配で、以前からベアフットシューズでのトレーニングに興味はありましたが、なかなか導入に踏み切れませんでした。
そこでこの点を確かめるために、一足のベアフットシューズのみを用いて30日間、毎日10kmを走ってみることにしました。
僕は走り込みのシーズンでもない限り、一か月もランニングを休まないことはありません。
通常のシューズでもハードな状況を、ベアフットシューズで問題なくこなすことができれば、ベアフットシューズで走り込みを行っても故障には繋がらない、と言えると思います。
疑問②:ランニングフォーム改善に効果はあるのか
ベアフットシューズを取り入れる最大の意義は、『故障しづらい理想的なランニングフォームを会得できること』でしょう。
でも、本当にフォーム改善の効果があるのでしょうか?
ランニングフォームを自分自身でリアルタイムに見ることはできないので、実感しづらいですよね。

Koki
そこで、今回は以下のランニングセンサーを使用してみます!

Garminの、ランダイナミクスポッド。Garminのランニングウォッチと連動し、上下動や左右の重心バランスなど、ランニングフォームの分析、数値化ができるデバイスです。
30日間のチャレンジの初日と最終日に、ランダイナミクスポッドでフォームのデータを計測し、数値を比較することでフォームの改善効果があったのか、確認します。
使用するベアフットシューズ
今回使用するシューズは、ALTRAの『エスカランテレーサー』。
ソールにおける踵部と前足部の高さの差である、ドロップがゼロであることが特徴のシューズです。

ドロップ構造は、ランナーの着地から蹴り出しまでの重心移動を補助してくれますが、このドロップ差をあえて無くしているこのシューズでは、自身の脚力で前方への推進力を生み出さなければなりません。
薄底のソールも相まって、それまで履きなれていたクッション性の高いランニングシューズとは、大きく異なる走り心地でした。

ポレさん
詳しくは、以下のレビュー記事で紹介しています!
30日間のラン記録
早速、検証の結果を紹介します。

Koki
毎日エスカランテレーサーを履いて10km走り続けましたが、故障の兆候は一切感じることなく、30日間を終えることができました。

Week1
チャレンジスタート直後の一週目。
まだまだゼロドロップシューズの走り心地に慣れていなかったため、まずは独特の接地感を身体で覚えることを意識。
Count | Day | メニュー | 結果 |
---|---|---|---|
1日目 | 5/6(金) | 10km jog | 51'13"(5'07"/km) |
2日目 | 5/7(土) | 3km P.R.(アップ2km、ダウン5km) | 4'07"-4'10"-4'14" |
3日目 | 5/8(日) | 10km jog | 49'53"(4'59"/km) |
4日目 | 5/9(月) | 10km jog | 48'50"(4'53"/km) |
5日目 | 5/10(火) | 10km jog | 53'15"(5'20"/km) |
6日目 | 5/11(水) | 10km jog | 51'21"(5'08"/km) |
7日目 | 5/12(木) | 10km jog | 52'48"(5'17"/km) |
2日目には、ポイント練習のペースでも使用できるシューズか確認するため、ロードで3kmのペース走を行ってみました。

Koki
サブスリーのレースペース、4'15"/kmでも、問題なく走ることができました。
Week2
二週目に入ると、シューズの走り心地や毎日10kmを走る感覚にも慣れてきて、日々の10kmを楽にこなせるようになりました。
9日目には、前週の倍の距離、6kmのペース走も実施。設定通り4'15"/kmペースでまとめることができ、エスカランテレーサーはポイント練習でも問題なく使えそうなシューズだと感じました。
Count | Day | メニュー | 結果 |
---|---|---|---|
8日目 | 5/13(金) | 10km jog | 55'23"(5'32"/km) |
9日目 | 5/14(土) | 6km P.R.(アップ2km、ダウン2km) | 4'08"-4'08"-4'11"-4'14"-4'18"-4'15" |
10日目 | 5/15(日) | 10km jog | 50'02"(5'00"/km) |
11日目 | 5/16(月) | 10km jog | 52'11"(5'13"/km) |
12日目 | 5/17(火) | 10km jog | 49'28"(4'57"/km) |
13日目 | 5/18(水) | 10km jog | 53'04"(5'18"/km) |
14日目 | 5/19(木) | 10km jog | 49'46"(4'59"/km) |
Week3
後半突入の三週目。
順調にランニングは継続できていましたが、この頃になると休養日を入れていないことで、疲労感を感じながらのランになることも増えてきました。
Count | Day | メニュー | 結果 |
---|---|---|---|
15日目 | 5/20(金) | 10km jog | 50'37"(5'04"/km) |
16日目 | 5/21(土) | 10km jog | 54'07"(5'25"/km) |
17日目 | 5/22(日) | 10km jog | 51'21"(5'08"/km) |
18日目 | 5/23(月) | 10km jog | 53'30"(5'21"/km) |
19日目 | 5/24(火) | 10km jog | 48'34"(4'51"/km) |
20日目 | 5/25(水) | 10km jog | 55'54"(5'35"/km) |
21日目 | 5/26(木) | 10km jog | 57'11"(5'43"/km) |
Week4
四週目に入り、ゴールまであとわずか。
この週は、平日のランニング時間の確保が大変でした。仕事で遅くなったり出張が入ったりで、スタートが22時過ぎとなることも……
Count | Day | メニュー | 結果 |
---|---|---|---|
22日目 | 5/27(金) | 10km jog | 53'26"(5'21"/km) |
23日目 | 5/28(土) | 10km jog | 55'01"(5'30"/km) |
24日目 | 5/29(日) | 10km jog | 57'24"(5'44"/km) |
25日目 | 5/30(月) | 10km jog | 49'57"(5'00"/km) |
26日目 | 5/31(火) | 10km jog | 56'20"(5'38"/km) |
27日目 | 6/1(水) | 10km jog | 55'33"(5'33"/km) |
28日目 | 6/2(木) | 10km jog | 54'17"(5'26"/km) |

Koki
仕事の疲れで、普段だったらランオフにしていたようなスケジュールの日もありましたが、頑張ってきた30日チャレンジの終盤ということで、何とか走り続けられました。
Week5
5週目に入り、ついに30日チャレンジ完走!
Count | Day | メニュー | 結果 |
---|---|---|---|
29日目 | 6/3(金) | 10km jog | 50'20"(5'02"/km) |
30日目 | 6/4(金) | 10km jog | 52'41"(5'16"/km) |

Koki
ほとんどがジョグとなりましたが、300kmをベアフットシューズのみで怪我無く走りきれたことで、ベアフットシューズは負荷が大きいため故障しやすい、とは言えないと感じています!
フォームの改善効果を確認
続いて、30日のベアフットシューズによるランニングの前後で計測したデータを比較し、ランニングフォームの改善効果があったのか確認してみます。
比較項目は、以下の4つ。
上下動(cm) | ランニング中の、一歩ごとの胴体の上下方向への移動量。この数値が少ないほど、エネルギーの無駄が少なく効率的な走り方と言われる。また、上下動が小さいほど、下半身への衝撃負荷が小さくなるため、故障しづらい走り方といえる。 |
---|---|
上下動比(%) | 上下動を歩幅で割った値。歩幅が広いことは、水平移動におけるメリットであり、上下動が大きいことはコストとなる。よって、上下動比が低いことは、少ないコストで大きなメリットが得られている状態。 |
接地時間(ms) | ランニング中に足が地面についている時間。経験を積んだランナーはほとんどの場合300ms以下であり、エリートランナーほど短くなる傾向がある。 |
GCTバランス | 左右の足の接地時間から、ランニングフォームの対称性を示した値。左右が同じ値(50:50)に近づくことが、理想的なフォームとされる。 |
チャレンジ前
まずは、ベアフットシューズを使用する以前のデータがこちらです。




ジョギングでの計測で、上下動10.9cm、上下動比9.8%、接地時間247ms、GCTバランス左50.6%/右49.4%、という結果でした。
特に接地バランスが左に偏っており、左足により負荷がかかっている状態です。僕がこれまで経験した故障は、左足側である割合が多く、この結果を見ると納得ですね。
チャレンジ後
続いて、30日間、ベアフットシューズのみでランニングを行った後のフォーム計測結果がこちら。




同程度のペースのジョギングでの計測で、上下動9.9cm、上下動比8.4%、接地時間239ms、GCTバランス左50.0%/右50.0%、という結果となりました。
比較結果
30日チャレンジの前後の変化は、以下の通り。着色した側が、より良い数値です。
項目 | ベアフットシューズ使用前 | ベアフットシューズ使用後 |
---|---|---|
上下動(cm) | 10.9 | 9.9 |
上下動比(%) | 9.8 | 8.4 |
接地時間(ms) | 247 | 239 |
GCTバランス | 左50.6% / 右49.4% | 左50.0% / 右50.0% |

ポレさん
これは流石に盛ってるやろ!!
……と、突っ込まれそうなくらい、自分でも驚くような結果が得られました。
4つの指標の全てにおいて、数値の改善が見られました。
特に、これまで色々試してもなかなか改善しなかった、左右の接地バランスが、50:50の理想的な値に改善されていたことに驚きました。

Koki
ベアフットシューズはランニングフォームの改善に効果的であることを、数値から確認することができました!
まとめ
過度なクッション性や機能性を排し、ミニマルな構造とすることで、脚本来の機能を呼び起こすことができる、というコンセプトで人気の、ベアフット・ランニングシューズ。

通常のランニングシューズよりもクッション性やサポート性が低いことで故障しないのか?本当にフォーム改善に繋がるのか?といった、僕自身が感じていた不安や疑問点を、今回30日かけて検証してみました。
結論としては故障に繋がる感触は一切なく(むしろ故障しづらい!?)、フォームの改善効果も数値で可視化することができました。

Koki
今後も、日々のジョギングはベアフット・ランニングシューズを中心に行っていく予定です!
もしベアフット・ランニングシューズを取り入れてみたいと感じた方は、ALTRAの『エスカランテレーサー』がおすすめです。
今回の検証でも使用したシューズで、僕は今後もメインシューズとして愛用していきたいと思っています。