走ることを楽しみ尽くす! 子煩悩父の、マラソン奮闘記。

『BORN TO RUN 走るために生まれた』を読んで得られたこと

クリストファー・マクドゥーガル氏の著書、『BORN TO RUN 走るために生まれた』を読んでみました。

ランナーの永遠の課題、故障をしないためにはどうすればよいのか?と悩む著者が、メキシコの秘境で暮らす”走る民族”タラウマラ族との出会いを通して、故障をしないランニングスタイルを提唱する一冊。

全世界で流行した”ベアフット・ランニング”の火付け役となった書籍

この記事では、『BORN TO RUN 走るために生まれた』を読むことで学べたこと、僕の日々のランニングに取り入れたことを紹介します。

書籍の概要

著者のクリストファー・マクドゥーガル氏が、自身が故障に悩まされた経験から、メキシコの山岳地帯で暮らす民族”タマウマラ族”を探し求め、彼らが長距離走で常識外れの走力をもっている秘密を見つける物語。「人間の身体が走るためにできている」ということが解説されています。

この本が発売されたのは、2009年。その年のノンフィクションのベストセラーとなりました。

この本によって全世界で”ベアフット・ランニング”がブームとなり、それまで主流であったヒール(踵)からの着地ではなく、ミッドフット(中側部)またはフォアフット(前足部)からの着地が推奨されるようになるなど、走り方の根本が変わるきっかけとなった書籍です。

“ベアフット・ランニング”とは、文字通り裸足で芝生やグラウンドなどの安全な地面を走ったり、一般的なシューズに比べてクッション性能やサポート性能の低い、ベアフットランニングシューズおよびワラーチで走ること。

僕が陸上を始めた2011年当時、踵から着地するヒールストライクが良い走り方だと教わりました。

2023年現在は、フォアフット走法が推奨されるようになっており、2010年代はランニングフォームの常識が変わる過渡期であったことがわかりますね。

書籍の構成

“BORN TO RUN 走るために生まれた”は、主に以下の三つの実話が織り交ぜられながら、展開されていきます。

『BORN TO RUN』の構成
  • メキシコの秘境で暮らす「タマウマラ族」に出会い、彼らが長距離走の能力に優れている秘密に迫る物語
  • 人間の身体が走るためにできている、ということを、科学的な根拠とともに解説
  • タラウマラ族とアメリカ人ウルトラマラソンランナーが、世界一過酷と言われる耐久レースで対決する実話

そこそこ文章量のある書籍ですが、各章にマラソンランナーに役立つ情報やヒントが散りばめられているので、じっくり最後まで読んでみることをおすすめします。

この本を読んで得られたこと

僕がこの本を読んで、学べたこと、良かったと感じたことは、以下の通り。

正しいフォームで走ることの重要性を理解できた

僕がこの本に興味を持ったきっかけは、僕自身がこれまでの競技生活の中で何度も故障を経験しており、ケガ無く楽しく走り続けるにはどうすれば良いのか?

と悩んでいたことです。

高性能シューズに頼った僕の実経験

僕はこの本を手に取る前、故障予防にはクッション性が高いシューズで脚をしっかり護ることが重要だ、と思い込んでいました。

2021年秋、走行距離を伸ばしていきたい時期に購入したのが、NIKEの『インヴィンシブルラン フライニット』。

お値段2万円以上と、ジョグ用シューズとしては高価。故障予防のための投資と割り切り、購入しました。

確かに走りやすい、良いシューズではありましたが、故障予防に効果があるのか、と言われると、個人的には従来のシューズとの違いは感じませんでした

三か月ほど使用しましたが、その期間に足首や股関節等に、故障の兆候を感じることが何度かありました。

シューズの保護機能や金額は、故障予防とはあまり関連性が無いようです。

この経験があったからこそ、本書で解説されている「故障しないためには脚本来の機能を使って走る」というスタンスに心から共感できました。

シューズの性能は、故障予防の本質ではない

書籍の中で、以下のように述べられています。

いまではソールにベッドのスプリングを埋め込んだランニングシューズや、マイクロチップでクッションを調節するアディダスを買うこともできるのに、負傷率はこの三〇年間に少しも下がっていない。

BORN TO RUN 走るために生まれた / クリストファー・マクドゥーガル / 2009年

僕が走り始めた2010年頃のシューズと、現在2022年に各社から発売されているシューズを比較すれば、性能は言うまでもなく今日のシューズのほうが上でしょう。

当時には考えられなかったような高性能のフォーム材を搭載したデイリートレーナーや、厚底+カーボンプレートによりスピードとクッション性を両立したレースシューズが多数ラインナップされています。

しかし、これらのシューズの進化により、本当に故障は減っているのでしょうか?

思い返してみると、僕自身の故障の頻度や、周囲のランナーの故障の発生頻度を見ていると、10年前とほとんど変わっていないように感じるのです。

さらに、以下のような一節もあります。

保護機能(高いクッション性、”プロネーション矯正”など)がついた高価なランニングシューズを履く者は、安価な(四〇ドル未満の)シューズを履くランナーよりもけがをする頻度が著しく大きい

BORN TO RUN 走るために生まれた / クリストファー・マクドゥーガル / 2009年

まさに先ほど紹介した、高性能シューズに頼った僕自身の体験談ですね。

統計データに裏付けられたこれらの結果を見て、良いシューズを履くだけで、故障を予防できるなんてことはない、と理解できました。

タマウマラ族の速さの秘訣は、強靭な体幹による美しいフォーム

故障知らずの走る民族『タマウマラ族』の走りは、以下のように表現されています。

足は岩のあいだで激しいジルバを踊っているのに、脚より上の部分は安定していて、ほぼ動かない。腰から上だけを見れば、スケートですべっているように思えるだろう。

BORN TO RUN 走るために生まれた / クリストファー・マクドゥーガル / 2009年

一般的に上下動が少ないフォームは、エネルギーロスが少ない理想的なランニングフォームと言われています。

タラウマラ族のランナーは、山岳地帯でもこのような走りが出来る強靭な体幹を持っており、このことが裸足同然のボロボロのシューズでも超人的な走力を発揮できる秘訣だと記されています。

ランニングシューズへの物欲をコントロールできるようになった

上記のように、この本を読むことで、ランニングシューズの性能と故障の発生には直接的な関係はない。むしろ、高性能なシューズに頼りすぎることで、故障率が上がる可能性すらある、ということがわかりました。

僕はランニングシューズが好きで、近年の新技術を満載したモデルが発売されるたびに、物欲を抑えきれなくなってついつい購入してしまう、ということもありました。

一時期は十足以上、シューズボックスに入りきらないほどのランニングシューズを持っていたことも……

それがこの本を読んで、大切なのはシューズではなくランニングフォーム、と意識が変わったことで、必要以上にランニングシューズが欲しいと思わなくなりました。

2023年1月現在、僕は日々のトレーニングのほとんどを、二足のランニングシューズのみでこなしています。

この意識の変化により、ランニングシューズの新モデルの情報に色めき立つことなく、トレーニングに集中できるようになりました。

ランニングに取り入れたこと

僕がこの本の影響を受けて、実際に日々のトレーニングに取り入れたことは、以下の通り。

ベアフットシューズを使用するようになった

脚本来の機能を活かした、理想的なランニングフォームを手に入れるため、ベアフットスタイルのランニングシューズをトレーニングに使用するようになりました。

2023年1月現在、僕が日々のジョギングで使用しているシューズは、NIKE の『フリー ラン 5.0』です。

このシューズを使い始めた当初は、それまでと異なる走り心地や身体への負担に驚きましたが、すぐに慣れました。

現在は毎日この薄底シューズで走っているにも関わらず、故障の兆候や疲労の蓄積を感じることは全くありません。

理想的なランニングフォームに少し近づいたのかもしれません。

体幹トレーニングを取り入れた

僕はこれまで、筋トレや体幹トレーニングをほとんど行っていませんでした。

しかし、サポート性の低いシューズで体に負担のかからない理想的な走り方をするためには、体幹の強化が必要だと認識し、毎日のランニング後に、15分程度、体幹トレーニングの時間を設けることにしました。

今後、走力アップに繋がることを期待しています。

まとめ

『BORN TO RUN 走るために生まれた』を読んだことで、ランニングシューズの性能と故障の発生には関連性がない、故障しない最大のポイントは、脚本来の機能を活かして走ること、など、それまでのランニングに対する常識を大きく変える知見を得ることができました。

故障に悩まされた経験のあるランナーの方は、是非とも一読してみることをおすすめします。

きっと、今後のランニングをより良いものにしてくれるヒントが見つかるはずです。